必殺シリーズの全作品レビュー

子供のころに「暗闇仕留人」の再放送を観たことをきっかけに、必殺シリーズのファンになりました。それ以来、いろいろな作品を観てきたのですが、テレビ埼玉で「必殺仕掛人」から「必殺仕事人・激突!」まで通して見ることができましたので、それぞれのレビューをしてみます。なお、古い作品ですので、ネタバレありでレビューします。ご注意ください。

必殺仕掛人

お勧め度:☆☆☆

池波正太郎さんの原作を基にしていますが、ほぼオリジナル作品です。殺しのシーンを最後のクライマックスとする、必殺シリーズのフォーマットがまだ確立されておらず、普通の時代劇に近い作品になっています。

依頼人が元締めに仕掛けを依頼しすると、元締めが梅安たち「実行犯」に依頼人やその理由を告げずに仕掛けの対象を指示するという仕組みになっています。依頼人は梅安たちの存在を知らず、梅安たちは依頼人やその理由を知りません。

依頼人が秘密を喋っても「実行犯」は分からず、梅安たちが奉行所に捕まっても依頼人を知らないため、お互いの身の安全を図るのに合理的なシステムをとっています。ただ、この設定だと梅安たちは依頼人や理由も分からずに仕掛けのみを行うので、脚本が作りづらいためか、なし崩し的に無くなっていきます。このシステムは「必殺必中仕事屋稼業」や「必殺まっしぐら!」でも採用されていますが、同様に設定がなし崩し的に無くなっていきます。

クレジット順の主役は藤枝梅安(緒形拳)ではなく、西村佐内(林与一)が主役です。佐内は元々辻斬りで、どちらかと言うと仕掛けられる側の人間でしたが、元締めの音羽屋半右衛門にスカウトされて仕掛人になりました。罪も無い人間を快楽のため手に掛けていた人物なので、感情移入しにくいのが残念です。

必殺仕置人

お勧め度:☆☆☆

必殺シリーズ中で1位、2位を争う人気キャラクターの中村主水と念仏の鉄が初めて登場する作品です。

必殺シリーズの他作品は第1話の時点で「裏稼業」が存在している設定になっていますが、この作品だけは「裏稼業」を立ち上げる過程が描かれています。

助け人走る

お勧め度:☆☆☆☆

前半は非常に明るい作風で、人助けをする過程で殺しも行うという設定になっています。後半は一転してハードな展開に。

暗闇仕留人

お勧め度:☆☆

人気キャラクターの中村主水が再登場する作品です。

主水シリーズの前作「必殺仕置人」の鉄と錠、次作「必殺仕置屋稼業」の市松と印玄といった濃いキャラに比べて、糸井貢と大吉はややキャラが薄く感じます。

必殺必中仕事屋稼業

お勧め度:☆☆☆☆

主役の知らぬ顔の半兵衛と政吉は、いずれも殺しの素人で、「博打」をテーマにした作品です。

ベストエピソード:第20話「負けて勝負」

必殺仕置屋稼業

お勧め度:☆☆☆☆☆

主役の市松は善悪問わず誰でも殺す殺し屋という設定が面白いです。

必殺仕業人

お勧め度:☆☆☆☆☆

劇中でも必殺仕置屋稼業に続く作品になっています。

本作の登場人物である赤井剣之介、中村主水、やいとや又右衛門および捨三は金だけで繋がった間柄とも評されますが、作品を観る限り4人は結構仲が良く、守銭奴の主水が剣之介に金を貸したりしています。

ベストエピソード:第24話「あんた この替え玉をどう思う」

必殺からくり人

お勧め度:☆☆☆☆

中村主水なら絶対やらないであろう、無料で仕事を受けたり、殺した悪人の家から金を持ち出して「頼み料」を得るなど、からくり人は独特の仕事観を持ちます。

ベストエピソード:第2話「津軽じょんがらに涙をどうぞ」、第8話「私ハ待ッテル一報ドウゾ」

必殺からくり人・血風編

お勧め度:☆☆

幕末の品川宿を舞台にした作品です。暗闇仕留人も幕末を舞台としていますが、官軍(薩長)や彰義隊が登場する本作の方が幕末色が強い作品となっています。「必殺からくり人」と銘打っているものの、本作は山田五十鈴さんが出演していないので、他のからくり人シリーズとは作風が異なっています。

新必殺仕置人

お勧め度:☆☆☆☆☆

必殺ファンの間でシリーズ最高傑作と評される作品です。私も同感です。コメディ色が強い作品ですが、キャラクターやストーリーの魅力で圧倒されます。

最終話「解散無用」を子供の頃に観て、トラウマとなりました。

新必殺からくり人

お勧め度:☆☆☆

「東海道五十三次殺し旅」をテーマにした作品です。

登場人物が個性的で脚本も面白いものが多いのですが、殺しを行うのが蘭兵衛とブラ平の2人だけのことが多く、クライマックスのシーンがやや盛り上がりに欠けるのが残念なところです。

ベストエピソード:第13話「東海道五十三次殺し旅 京都」

江戸プロフェッショナル・必殺商売人

お勧め度:☆☆

サブタイトルに「江戸プロフェッショナル」とあるように、商売人はベテランで構成されています。

必殺からくり人・富嶽百景殺し旅

お勧め度:☆

旅や浮世絵をテーマとしているところは、新必殺からくり人と同じですが、今回は日本橋から京へ行くような明確な旅程はありません。

前回の旅では、旅立つ前にすべての浮世絵を受け取っていました。今回の旅では依頼ごとに唐十郎が浮世絵を届けています。葛飾北斎からの伝言まで伝えているので、わざわざ浮世絵で依頼する意味がなくなってしまっています。

ベストエピソード:第11話「甲州三坂の水面」

翔べ!必殺うらごろし

お勧め度:☆☆☆☆

オカルトをテーマとした作品で、放送時はその視聴率の低さに必殺シリーズ終了を検討したとも言われています。ただ、作品としては面白く、私は好きです。

前半はハード路線で、後半になるにつけて軟化していきます。後半では、おばさんの過去にからむエピソードが多くなっていくので、うまくマンネリ化を防いでいます。

おばさんが記憶を取り戻して過去に決着を付けるまでの旅という全体的なテーマもあり、物語としてきちんと結末を迎えているのも好感が持てます。

ベストエピソード:第9話「家具が暴れる恐怖の一夜」

必殺仕事人

お勧め度:☆☆☆☆

全84話と、必殺シリーズ中、最も長い作品です。

第3話「仕事人危うし!暴くのは誰か?」では、悪人ではない人物を手に掛けます。「必殺仕掛人」や「必殺仕置屋稼業」でも相手を誤って悪人以外を手に掛けることはありましたが、これは依頼人が掟を破ったことが理由です。悪人ではない人物を意図的に手に掛けるこのエピソードは、初期のハード路線を代表する佳作です。

序盤の2クール(26話)で終わっていれば、必殺シリーズの最高傑作といってもよいくらいの出来でした。人気が出たため、だらだらとマンネリ化して84話まで続いてしまったのが残念です。

ベストエピソード:第3話「仕事人危うし!暴くのは誰か?」、第6話「主水は葵の紋を斬れるか?」

必殺仕舞人

お勧め度:☆☆

新必殺からくり人と同様に、旅をテーマとした作品です。

鎌倉の駆け込み寺「本然寺」の指示を受けて、手踊り民謡の坂東京三一座が勧進興行という名目で各地で女たちの恨みを晴らす旅を続けます。

娘手踊りのシーンが華やかです。僕が江戸時代の観客だったら、泣き節お艶一座より坂東京三一座の方を観に行くかな。

新必殺仕事人

お勧め度:☆☆☆

人気キャラクターとなる三味線屋の勇次が初登場する作品です。劇中のセリフによると、必殺仕事人の10年後の話になっています。

ベストエピソード:第37話「主水 娘と同居する」

新必殺仕舞人

お勧め度:☆☆

前作「必殺仕舞人」の続編で、登場人物もほぼ同じです。

前作の最終回で生死不明になった晋松も無事に再登場します。ただ、生死の境をさまよった影響なのか、殺し技が拍子木に変わっています。

良くも悪くも前作と同じですが、コメディリリーフの権太が加わったので、今作の方がメリハリが効いています。

ベストエピソード:第11話「化け猫騒ぎはのんのこ節」

必殺仕事人Ⅲ

お勧め度:☆☆

必殺仕事人Ⅳのキャラクターに仲間として受験生の西順之助が加わっています。

必殺渡し人

お勧め度:☆☆☆☆

裏稼業の仲間達が皆同じ長屋に住んでいて、関係性が濃いのが特徴です。

ベストエピソード:第3話「大元締めの前で渡します」

必殺仕事人Ⅳ

お勧め度:☆

レギュラー陣は前作「必殺仕事人Ⅳ」と変わらず。時事ネタを取り入れたストーリーが多いです。

必殺仕切人

お勧め度:☆

必殺仕事人Ⅳの登場人物である三味線屋の勇次のスピンオフ作品です。

仕切人は7人組の構成で、必殺シリーズ史上最大人数の大所帯です。個性的なキャラクターが多数いますが、全員が揃うのは最初の数話と最終話のみで、主役のお国が出演していない回もあります。

時事ネタを取り入れた脚本でしたが、むしろ評判が悪かったようです。

ベストエピソード:第1話「もしも大奥に古狸がいたら」

必殺仕事人Ⅴ

お勧め度:☆☆

人気キャラクターだった飾り職の秀と三味線屋の勇次に代わり、花屋の政と組紐屋の竜が登場した作品です。秀と勇次がとても人気のあるキャラクターでしたが、政と竜も人気が出ました。

残念ながら、組紐屋の竜を演じた京本政樹さんが撮影中に怪我をした影響で、短い話数の作品となってしまいました。

必殺橋掛人

お勧め度:☆☆☆

必殺シリーズの初期に悪役としてしばしば登場していた津川雅彦さんが主役の柳次を演じた作品です。

必殺仕事人Ⅴ・激闘編

お勧め度:☆☆☆

前作「必殺仕事人Ⅴ・激闘編」のレギュラー陣に加えて、助っ人の仕事人である壱、弐、参が加わりました。

映画版も作られて、劇中で組紐屋の竜、壱、参が死んでしまうという、ハードな展開のストーリーでした。

必殺まっしぐら!

お勧め度:☆☆

人気キャラクターの飾り職の秀を主人公として、テレビゲームの「スーパーマリオブラザーズ」をモチーフにした異色作です。

必殺仕事人Ⅴ・旋風編

お勧め度:☆

夜鶴の銀平とお玉が新たにレギュラーに加わりました。

必殺仕事人Ⅴ・風雲竜虎編

お勧め度:☆☆

かげろうの影太郎が新たにレギュラーに加わりました。

必殺剣劇人

お勧め度:☆☆

剣劇映画をモチーフとした作品です。

必殺仕事人・激突!

お勧め度:☆

夢次や山田朝右衛門が新たにレギュラーに加わりました。

 

コメント

  1. 沖市松 より:

    必殺仕事人2009
    お勧め度:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

    東山紀之が演じる南町同心・渡辺正五郎を主役に据えた完全リニューアルシリーズ。仕事人メンバーも松岡昌宏・田中聖・大倉忠義らジャニーズの面々で構成され、世代交代が成されています。とはいえ、後見人的立場で藤田まことの中村主水も参入しており、シリーズ中でも珍しい「中村主水が居ながらの、中村主水が主役ではない非・主水シリーズ」となっています。殺しのシーンのBGMを始めとする音楽は旧来の流用がメインながら、プロット・演出・映像・殺陣に関しては、「必殺仕事人・激突!」でも拭い切れずにいた「悪い意味でのマンネリと惰性」からの脱却に成功しており、活力を取り戻したメリハリのあるシリーズとなっています。当初はパイロット版となる「必殺仕事人2007」のメンバーでスタートし、全11話で終了する予定であったところを、2クールに延長された影響から仕事人メンバーの大倉忠義が降板のため殉死し、田中聖が加わるという過程が第11話から14話までで描かれますが、これが物語に更なるうねりを与える形になり、シリーズをより厚みのある作品にしています。仇役も大杉漣・哀川翔・浅野ゆう子・小林稔侍などなど豪華な布陣。冷静な眼で見ると、古参の必殺ファンによるジャニタレ批判の上を行く完成度となっています。

    ベストエピソード
    「鬼の末路」「仕事人、死す!」
    「女の一分」
    「仕事人狩り!」「最後の大仕事」