電力の先物取引が2019年9月17日に東京商品取引所(TOCOM)で始まりました。この記事では、電力先物取引とは何か、その仕組みや電力先物市場をご紹介します。
電力先物取引とは
電力先物取引とは、数か月先の電力調達価格を、あらかじめ決めて行われる取引です。電力小売りの自由化で参入した業者が、価格変動リスクを減らして、安定調達につなげることができます。
業者などが市場で調達する電力の価格(スポット価格)は乱高下しやすく、猛暑などでエアコンの利用が増える時期には、取引価格が数倍に跳ね上がることもあります。
将来の取引価格を決める先物取引を通じて、一定の価格で電力を買う権利を持てば、取引価格が急上昇しても、あらかじめ想定した価格で電力が調達できます。価格が下がれば損をする可能性もありますが、調達価格の変動を抑えられるため、コストの計算がしやすくなります。
2016年4月の電力小売りの全面自由化以降、電力の小売り業者は約600社に上ります。大手電力以外のこうした新電力には、発電所を持たず、外部から電力を調達して販売している事業者が多く、先物取引の導入で経営の安定化を図ることができます。
電力を売る側にとっても、需要の少ない時期の販売価格を固定化できるメリットがあります。
日本は電力消費量で世界4位の規模を誇り、世界中の資金を呼び込めれば、電力先物取引で先行する欧州以上に取引が活発になる可能性もあります。
電力先物試験上場
電力先物の上場申請にあたって、東京商品取引所(TOCOM)は正式な上場ではなく、認可要件が緩やかになる試験上場として申請しました。
電力先物を正式上場するためには、大手電力が発起人として参加することが必須でした。しかし、発起人として大手電力が参加しなかったため、新電力だけの発起人でも認可される試験上場に切り替えたためです。
東京商品取引所(TOCOM)は、3年後に電力先物の本格運用を目指しています。
電力先物市場
電力先物取引が行われる市場は、東京商品取引所(TOCOM)です。TOCOMでは、最大1年3か月先まで、約1か月分の電力価格を扱います。需要の多い平日日中の12時間を対象とした「日中ロード電力」と、休日を含めた24時間が対象の「ベースロード電力」を、それぞれ東日本と西日本に分けて取引します。
具体的には、電力先物取引は次の4つの商品で構成されます。
- 東エリアベースロード電力
- 東エリア日中ロード電力
- 西エリアベースロード電力
- 西エリア日中ロード電力
次の商品先物取引業者で電力先物を取り扱っています。
- 岡地
- 岡安商事
- コムテックス
- サンワード貿易
- 日産証券
- フィリップ証券
- 豊商事
- SBIフューチャーズ
電力先物取引仕組み
電力先物取引の仕組みは、次のとおりです。
項目 | ベースロード電力 | 日中ロード電力 | ||
---|---|---|---|---|
東エリア | 西エリア | 東エリア | 西エリア | |
取引単位 | 100kWh × 24h × 当該月の歴日数 | 100kWh × 12h × 当該月の平均日数 | ||
呼値 | 0.01円/kWh | |||
限月 | 直近15限月 | |||
取引最終日 | 当月の最終歴日の前営業日 | |||
最終決済日 | 取引最終日の翌月第1営業日 | |||
立会時間 | 日中立会:8:45~15:15 夜間立会:16:30~19:00 |
電力先物市場の在り方に関する検討会
電力先物取引の上場は経済産業省の電力先物市場の在り方に関する検討会で検討を重ねてきました。
電力先物市場の在り方に関する検討会について詳しくは、次の公式サイトでご確認ください。
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