CoCo債とは、金融機関が発行するハイブリッド証券の一種です。自己資本比率が一定の水準を下回ると、株式へ転換されたり、元本が削減される債券です。この記事では、CoCo債について紹介します。
CoCo債とは
CoCo債とは「Contingent Convertible Bonds」の略称で、日本語では偶発転換社債とも呼ばれています。
金融機関が発行するハイブリッド証券の一種で、自己資本比率が一定の水準を下回ると、株式へ転換されたり、元本が削減される債券です。
バーゼル銀行監督委員会が金融危機を受けて作成したバーゼル3のガイドラインで定める要件を満たすために作り出されました。
CoCo債は、株式(資本)と債券(負債)の両方の性格を併せ持つハイブリッド証券です。
国際的に活動する銀行には、バーゼル3によって一定の自己資本比率を保つことが義務づけられています。
通常、債券は借金であり、資本とは認められません。ただし、金融機関が発行する債券がバーゼル3で定められてる条件を満たせば、資本とみなされます。これがハイブリッド証券です。
トリガーによって元本削減や株式転換される
CoCo債にはトリガー条項が付されています。
CoCo債の発行体である金融機関の自己資本比率が一定の水準を下回ると、それを契機(トリガー)に、株式への転換(株式転換型)や元本削減(元本削減型)が行われます。
トリガーが発動すると、発行体である金融機関の損失が吸収されます。
バーゼル3
バーゼル3とは、国際的に活動する銀行の自己資本比率に関する国際統一基準です。世界的な金融危機の再発を防いだり、国際金融システムのリスク耐性を高めることを目的として、バーゼル銀行監督委員会によって策定されました。
バーゼル3では、銀行の総自己資本を普通株式等Tier1資本、AT1債およびTier2債の合計と規定しています。
段階 | 資本 |
---|---|
Tier1 | 普通株式等 |
AT1債 | |
Tier2 | 劣後債 |
このうち、CoCo債はAT1債に分類される債券です。
AT1債とは
AT1債とは「Additional Tier 1 Bond」の略称で、Tier1資本に分類される債券です。通常の社債と比べて、AT1債は債務の弁済順位が低くなっています。
発行している銀行が法的破綻に至っていなくても、監督当局により実質的に破綻していると認定された場合には、AT1債の元本削減によって損失吸収に充当される特約が定められています。
実質的破綻に至らなくても、発行体の自己資本比率が一定の水準を割り込んだ場合には、AT1債の元本削減を通じて損失吸収に充当されるという条項が付されています。具体的には、普通株式等Tier1比率で5.125%を割り込んだときです。
また、AT1債は発行体の裁量によって利払いが停止されたり、期限前償還されることがあります。
これらのデメリットの反面、AT1債は通常の社債よりも高い金利が設定されています。
TLAC債
TLACとは、Total Loss-Absorbing Capacityの略称で、総損失吸収力を意味します。
金融危機に陥ったときに銀行が破綻すると、公的資金の注入等で納税者に負担がかかります。これを防ぐため、日米欧などの金融当局が作る金融安定理事会(FSB)が資本規制を制定しました。
この資本規制の対象になるのは、世界の重要銀行であるG-SIFIs(Global Systemically Important Banks)です。これらの銀行は、総資本に加えて一定の総損失吸収力(TLAC)を保つことが義務づけられています。
そのため、あらかじめ損失を吸収できる規模の社債(TLAC債)を発行しておき、破綻時にTLAC債の保有者が損失を負担する仕組みになっています。
投資信託
CoCo債をおもな投資対象とする投資信託には、次のファンドがあります。
- グローバルCoCo債ファンド
グローバルCoCo債ファンド
出典:交付目論見書(2019)日興アセットマネジメント
グローバルCoCo債ファンドは、世界の金融機関が発行するCoCo債を始めとするハイブリッド証券をおもな投資対象とする投資信託證券に投資を行い、インカム収益を目指す投資信託です。
投資対象地域 | グローバル(含む日本) |
投資対象資産 | ハイブリッド証券 |
為替ヘッジ | ヘッジなしコース:なし 円ヘッジコース:あり(フルヘッジ) 先進国高金利通貨コース:なし 新興国高金利通貨コース:なし |
投資形態 | ファンド・オブ・ファンズ |
決算頻度 | 年12回(毎月) |
運用会社 | 日興アセットマネジメント |
購入時手数料 | 販売会社により異なる |
信託財産留保額 | なし |
信託報酬 | 年率1.045% |
実質コスト | 年率1.785% |
グローバルCoCo債ファンドが投資対象とするCoCo債の発行体は、G-SIFIsに含まれる銀行を中心としています。
G-SIFIsとはグローバルな金融システム上、重要な金融機関で、世界の中でもより高い財務健全性が求められています。
グローバルCoCo債ファンドには、4つのコースが用意されています。
- 円ヘッジコース
- ヘッジなしコース
- 先進国高金利通貨コース
- 新興国高金利通貨コース
投資信託の価格変動要因が、コースによって異なります。
価格変動要因 | コース | |||
---|---|---|---|---|
円ヘッジ | ヘッジなし | 先進国 高金利通貨 |
新興国 高金利通貨 |
|
証券の値上がり/値下がり | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
為替差益/差損 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
為替取引によるプレミアム/コスト | × | × | 〇 | 〇 |
グローバルCoCo債ファンド(先進国高金利通貨コース)では、次の投資対象通貨の中から短期金利水準の高い3通貨を選定します。
- 米ドル
- イギリスポンド
- ユーロ
- カナダドル
- 日本円
- ノルウェークローネ
- スウェーデンクローナ
- スイスフラン
- オーストラリアドル
- ニュージーランドドル
グローバルCoCo債ファンド(新興国高金利通貨コース)では、次の投資対象通貨の中から短期金利水準の高い6通貨を選定します。
- ブラジルレアル
- ロシアルーブル
- インドルピー
- 南アフリカランド
- メキシコペソ
- インドネシアルピア
- トルコリラ
- 韓国ウォン
- 台湾ドル
- シンガポールドル
- フィリピンペソ
- ポーランドズロチ
- ハンガリーフォリント
- チェココルナ
- イスラエルシェケル
ETF
日本にはCoCo債をおもな投資対象とする上場投資信託(ETF)はありません。
海外のETFであれば、次のものがあります。
- WisdomTree AT1 CoCo Bond UCITS ETF
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