借地借家法とは、借地人や借家人を保護するための法律です。土地を借りる借地権と建物を借りる借家権の2種類があります。
読み方
借地借家法の読み方は「しゃくちしゃっかほう」です。
借地借家法
借地借家法とは、土地や建物の賃貸借契約に関するルールを定めた法律です。
底地
底地(そこち)とは、借地権が設定されている土地のことをいいます。底地に対して持っている権利(所有権や賃料請求権など)を総称して「底地権」といいます。底地権は賃料収入が得られることはもちろん、更新料や契約料等の一時金を受け取ることができることや、相続税評価額が更地に比べて低くなるというメリットがあります。相続税評価額は自用地(他人が使用する権利のない土地)と比較し通常で20~50% 低くなりますが、土地の上に住宅用・特定事業用・貸付事業用の建物が存在している場合、小規模宅地等の特例が適用できるとその底地の評価から最大で80%減額になるという軽減措置があります。
借地権
借地権とは、他人から土地を借りる権利のことをいいます。賃借人は、建物の引渡しを受けた後にこれに生じた損傷であっても、通常の使用および収益によって生じた建物の損耗および経年変化については、賃貸借終了時、原状に復する義務を負いません。
借地権には普通借地権と定期借地権の2種類があります。
普通借地権
普通借地権とは、契約期間の終了後に土地の借主が引き続きその土地の賃貸を希望すれば、借地上に建物がある場合に限り、契約がそのまま更新される借地権のことをいいます。土地の貸主(地主)は、正当な理由がなければ更新を拒むことはできません。
普通借家契約の契約期間は2年とすることが一般的です。1年未満の契約期間を定めた場合は、期間の定めのない賃貸借契約とみなされます。契約期間に上限はありません。
賃借人は原則として、その建物の賃借権の登記がなくても引渡しを受けていれば、その後その物権を取得した者に賃借権を対抗できます。
賃貸人の同意を得れば、賃借人は借地上に建物等を設置することができます。契約の更新がない場合、借地人は地主に対して建物を時価で買い取ることを請求することができます。ただし、次の場合は建物等を買い取るよう請求することはできません。
- 契約期間満了前に土地賃貸借契約を合意解除した場合
- 借地人が地代を支払わなかったために土地賃貸借契約が解除された場合
契約の存続期間 | 30年以上 |
更新 | 最初の更新は20年以上、2回目以降は10年以上 |
土地の利用目的 | 制限なし |
契約方法 | 制限なし |
契約期間終了時 | 原則として更地で返す |
定期借地権
定期借地権とは、契約期間の終了後、契約の更新はなく、土地が貸主に返還される借地権をいいます。
定期借地権は、普通の定期借地権である「一般定期借地権」、事業の用建物を建てるために土地を借りる「事業用定期借地権」、契約期間が終了したら建物付きで土地を返す「建物譲渡特約付借地権」の3種類に分類されます。
項目 | 一般定期借地権 | 事業用定期借地権等 | 建物譲渡特約付定期借地権 |
---|---|---|---|
契約の存続期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満 | 30年以上 |
更新 | なし | なし | なし |
土地の利用目的 | 制限なし | 事業用建物のみ | 制限なし |
契約方法 | 書面による | 公正証書に限る | 制限なし |
契約期間終了時 | 原則として更地で返す | 原則として更地で返す | 建物付きで返す |
事業用定期借地権等は社宅など居住用建物の所有を目的として設定することはできません。
借家権
建物の賃貸借のことを借家権といいます。借家権の場合、用途に限定はありません。
借家権には普通借家契約(ふつうしゃっかけいやく)と定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)の2種類があります。
普通借家契約 | 定期借家契約 | |
---|---|---|
賃貸借の用途 | 居住用・事業用いずれも可 | 居住用・事業用いずれも可 |
契約方法 | 口頭でも可 | 書面による契約のみ |
契約期間 | 1年以上 | 制限なし |
賃貸料の増減額の請求 | 特約にかかわらず可能 | 特約の定めに従う |
貸主からの契約終了通知 | なし | 事前に通知が必要 |
更新の有無 | 更新可能 | 原則として更新不可 |
貸主からの中途解約 | 原則として不可 | 特約の定めに従う |
借主からの中途解約 | 特約の定めに従う | やむを得ない場合に限る |
普通借家契約
普通借家契約は存続期間(契約期間)が満了した場合に、借主が借家契約の更新を請求できます。貸主は正当事由が無い限り、契約更新を拒むことができません。借主は借家権の登記をしなくても、建物の引渡しを受けていれば借家権を第三者に対抗できます。
正当事由とは、以下に示すような場合です。
- 賃貸人が貸している建物を自己使用する必要がある
- 老朽化等により貸している建物を建て替える必要がある
- 賃貸人から賃借人に立退料を支払う
普通借家契約の契約期間は1年以上で、一般的には2年とすることが多いです。なお、契約期間を1年未満とした場合は「期間の定めのない契約」とみなされ、各当事者がいつでも解約の申し入れができます。
定期借家契約
定期借家契約とは、借家契約期間が満了した場合に契約が更新されない借家契約です。定期借家契約を締結するときは、貸主は借主に対して、あらかじめ契約の更新がなく期間満了によって建物の単貸借が終了することを書面を交付して説明する必要があります。
定期借家契約の契約期間は、貸主と借主の間で自由に定めることができます。特に制限はありません。
定期借家契約の締結は、公正証書などの書面によって契約することが必要です。
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参考文献
デジタル庁 (2023) 借地借家法 | e-Gov法令検索
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