東京証券取引所の第1部と第2部、ジャスダック、マザーズが再編されてプレミアム、スタンダード、エントリーの3市場に再編されます。この記事では、東証の再編内容と、それによる影響について紹介します。
東京証券取引所の市場
東京証券取引所は5つの市場区分に分かれています。2022年4月1日に、4つの市場区分に再編されることが予定されています。
現在 | 再編後 | ||
---|---|---|---|
第1部 | プライム市場 | ||
第2部 | スタンダード市場 | ||
新興企業市場 | ジャスダック | スタンダード | |
グロース | グロース市場 | ||
マザーズ | |||
TOKYO PRO Market | TOKYO PRO Market |
新興企業市場にマザーズと旧大証のジャスダックが混在していたり、ジャスダックがスタンダードとグロースに分かれているなど、複雑だった市場がシンプルに再編されます。
- 2022.1.11市場選択の結果を公表
- 2022.4.4一斉移行日
- 2022.10末TOPIXのウェイト逓減開始
- 2023.10末TOPIXのウェイト逓減の再評価
- 2025.1末TOPIXのウェイト逓減終了
第1部
東証第1部の上場基準は、上場方法によって異なります。
株主数 | 2,200人以上 |
流通株式数 | 20,000単位以上 |
流通株式時価総額 | 10億円以上 |
流通株式比率 | 35%以上 |
時価総額 | 直接上場:250億円以上 2部やマザーズから鞍替:40億円以上 |
事業継続年数 | 3年以上 |
純資産の額 (連結・上場時見込み) |
10億円以上 |
利益の額(連結) または時価総額 |
経常利益の額が最近2年間合計5億円以上 時価総額500円以上、直前売上高100億円以上 |
もともと東証1部に直接上場するには推定時価総額が500億円以上必要でしたが、リーマン・ショック後の2012年に250億円以上に引き下げられました。リーマン・ショックによる不景気の影響で上場する企業が減ったため、上場手数料を稼ぎたい東証が基準を緩めたためです。
上場基準を緩めたために東証1部に大きな企業と小さな企業が混在してしまい、第2部や新興企業市場との違いが分かりにくくなったことが東証再編のおもな理由です。
市場再編後は、時価総額の基準が引き上げられます。プライム市場の上場企業数は、東証1部に比べて3割程度減る可能性があります。
第2部
東証2部は、第1部と新興企業市場に挟まれて、違いの分かりにくい市場でした。
株主数 | 800人以上 |
流通株式数 | 4,000単位以上 |
流通株式時価総額 | 10億円以上 |
流通株式比率 | 30%以上 |
時価総額 | 20億円以上 |
事業継続年数 | 3年以上 |
純資産の額 (連結・上場時見込み) |
10億円以上 |
利益の額(連結) または時価総額 |
経常利益の額が最近2年間合計5億円以上 時価総額500円以上、直前売上高100億円以上 |
東京証券取引所の市場再編後は、ジャスダック・スタンダードと統合されて、スタンダード市場になります。
新興企業市場
新興企業市場は旧大阪証券取引所のジャスダックと、東証マザーズが混在しています。どちらも新興企業を対象とした市場にも関わらず、それぞれ上場基準が異なっています。さらに、ジャスダックはスタンダードとグロースに分かれています。
項目 | マザーズ | JASDAQ | |
---|---|---|---|
スタンダード | グロース | ||
株主数 | 200人以上 | ||
流通株式数 | 2,000単位以上 | – | |
流通株式時価総額 | 5億円以上 | ||
流通株式比率 | 25%以上 | – | |
公募または 売出し等の実施 |
公募単位500単位以上 | 1,000単位以上 上場株数10%以上 |
|
時価総額 | 10億円以上 | – | |
事業継続年数 | 1年以上 | – | |
純資産の額 (連結・上場時見込み) |
– | 2億円以上 | 正 |
利益の額(連結) または時価総額 |
– | 直前期1億円または 時価総額50億円 |
– |
東京証券取引所の市場再編後は、ジャスダック・スタンダードがスタンダード市場、マザーズとジャスダック・グロースがグロース市場に分かれます。
TOKYO PRO Market
TOKYO PRO Marketは、2008年の改正金融商品取引法によって導入された「プロ向け市場制度」に基づいて開設された市場です。プロ向けの市場なので、個人投資家は直接投資できません。
東京証券取引所の市場再編による変更はありません。
再編後の市場区分
プライム市場
多くの機関投資家の投資対象になりえる規模の時価総額を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場です。
項目 | 新規上場 | 上場維持 |
---|---|---|
株主数 | 800人以上 | |
流通株式数 | 20,000単位以上 | |
流通株式時価総額 | 100億円以上 | |
売買代金 | 時価総額250億円以上 | 1日平均売買代金2,000万円以上 |
流通株式比率 | 35%以上 | |
収益基盤 | 最近2年間の利益合計が25億円以上 | 売上高100億円以上かつ 時価総額1,000億円以上 |
財政状態 | 純資産50億円以上 |
上場基準を満たせなくなれば上場廃止に
1部上場企業が経営不振に陥った際に2部へ降格する「指定替え」制度はなくなります。
プライム市場上場企業が経営難で上場維持基準を満たせなくなった場合、一定の猶予期間を経て上場廃止となります。
株主優待を廃止する企業も
東証1部市場の上場維持基準の一つに、株主数2,000人以上というものがあります。これがプライム市場では800人以上と大幅に緩和されます。
これまで東証1部上場を維持することを目的として株主優待制度を設けて、個人株主数を増やしてきた企業が株主優待制度を廃止することも考えられます。
スタンダード市場
公開された市場における投資対象として一定の時価総額を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場です。
項目 | 新規上場 | 上場維持 |
---|---|---|
株主数 | 400人以上 | |
流通株式数 | 2,000単位以上 | |
流通株式時価総額 | 10億円以上 | |
流通株式比率 | 25%以上 | |
収益基盤 | 最近1年間の利益合計が1億円以上 | |
財政状態 | 純資産が正であること |
グロース市場
高い成長可能性を実現するための事業計画およびその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場です。
項目 | 新規上場 | 上場維持 |
---|---|---|
時価総額 | – | 上場から10年経過後 40億円以上 |
株主数 | 150人以上 | |
流通株式数 | 1,000単位以上 | |
流通株式時価総額 | 5億円以上 | |
流通株式比率 | 25%以上 |
株価指数への影響
東京証券取引所の市場区分が再編されるのに伴って、影響を受ける株価指数があります。
継続する株価指数
次の株価指数は市場再編後も継続します。
- TOPIX(東証株価指数)
- 東証REIT指数
- 東証インフラファンド指数
- 東証REIT用途別指数シリーズ
- 東証REIT Core指数
- 東証REIT物流フォーカス指数
- 規模別株価指数
- TOPIXニューインデックスシリーズ
- 東証33業種別株価指数
- TOPIX-17シリーズ
- TOPIXスタイルインデックスシリーズ
- TOPIXレバレッジ指数
- TOPIXインバース指数
- 東証配当フォーカス100指数
- TOPIX高配当40指数
- TOPIX Ex-Financials
- 為替ヘッジシリーズ
- 上場時価総額加重TOPIX(旧東証株価指数)
東証株価指数(TOPIX)
東証株価指数(TOPIX)は、東証1部に上場している普通株式全銘柄を対象とした株価指数です。
東京証券取引所の市場再編後、東証株価指数(TOPIX)は市場区分と切り離されます。
2022年4月1日(金)時点のTOPIX構成銘柄は、新市場区分施行後の2022年4月4日(月)以降も市場区分に関わらず、TOPIX構成銘柄に採用されます。ただし、流通株式時価総額100億円未満の銘柄は段階的ウェイト低減銘柄として、2022年10月末日から四半期ごとに10段階で構成比率が逓減されます。
なお、プライム市場への新規上場や市場区分変更した銘柄は、自動的にTOPIX構成銘柄に採用されます。
日経平均株価(日経225)
日経平均株価(日経225)は、東証1部に上場している銘柄のうち、225銘柄を組入銘柄としています。
東京証券取引所の市場再編後は、プレミアム市場に上場している銘柄のうち、225銘柄が組入銘柄となります。
出典:日経平均株価の算出要綱および構成銘柄選定基準の改定について(日本経済新聞社)
JPX日経インデックス400(JPX日経400)
JPX日経インデックス400(JPX日経400)は、東証の第1部、第2部、マザーズ、ジャスダックの株式のうち、一定の基準を満たした400銘柄から構成される指数です。
もともと市場で区切っているわけではないので、再編後も採用銘柄に影響はないことが想定されます。
廃止される株価指数
東京証券取引所の市場再編に伴い、次の株価指数は廃止されます。
- 東証二部株価指数
- 東証マザーズ指数
- JASDAQ INDEX
- JASDAQ INDEX(スタンダード)
- JASDAQ INDEX(グロース)
- 東証マザーズCore指数
- J-Stock Index
- JASDAQ-TOP20
- TOPIXコンポジット
- 東証第二部コンポジット指数
- 東証マザーズコンポジット指数
東証二部株価指数
東証二部株価指数とは、東京証券取引所第二部市場に上場している全ての銘柄を対象とする株価指数です。2020年4月4日に東証二部が廃止されるのに伴い、東証二部株価指数も廃止されます。
東証マザーズ指数
東証マザーズ指数とは、東京証券取引所マザーズ市場に上場している全ての銘柄を対象とした株価指数です。2020年4月4日に東証マザーズ市場が廃止されるのに伴い、東証マザーズ指数も廃止されます。
東証マザーズCore指数
東証マザーズCore指数とは、東京証券取引所マザーズ市場に上場している銘柄のうち、時価総額や売買代金等を考慮して選定した15銘柄から構成される株価指数です。2020年4月4日に東証マザーズ市場が廃止されるのに伴い、東証マザーズCore指数も廃止されます。
JASDAQ INDEX
JASDAQ INDEXとは、東証JASDAQ市場に上場している全ての銘柄を対象とした株価指数です。2020年4月4日に東証JASDAQ市場が廃止されるのに伴い、JASDAQ INDEXも廃止されます。
J-Stock Index
J-Stock Indexとは、東証JASDAQ市場に上場している銘柄のうち、時価総額や売買代金を勘案して選定された100銘柄から構成される株価指数です。2020年4月4日に東証JASDAQ市場が廃止されるのに伴い、J-Stock Indexも廃止されます。
JASDAQ-TOP20
JASDAQ-TOP20とは、東証JASDAQ市場を代表する20銘柄から構成される株価指数です。2020年4月4日に東証JASDAQ市場が廃止されるのに伴い、JASDAQ-TOP20も廃止されます。
TOPIXコンポジットインデックスシリーズ
2020年4月4日にTOPIXコンポジットインデックスシリーズは廃止されます。
新設される株価指数
東京証券取引所の市場再編に伴い、次の株価指数が新設されます。
- 東証プライム市場指数(仮称)
- 東証スタンダード市場指数(仮称)
- 東証グロース市場指数(仮称)
- 旧東証市場第一部指数(仮称)
- 東証グロース250指数(仮称)
- 東証グロースCore指数(仮称)
- 東証スタンダードTOP20(仮称)
- 東証プライムコンポジット指数(仮称)
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