エンジェル税制とは、ベンチャー企業へ投資した個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。この記事では、エンジェル税制の要件と節税する確定申告のやり方を紹介しています。
エンジェル税制の要件
エンジェル税制とは、ベンチャー企業へ投資した個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。投資と売却のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。
ベンチャー企業へ直接投資した場合だけでなく、民法組合や投資事業有限責任組合を経由した投資についても、エンジェル税制の対象になります。
YouTubeの経済産業省公式チャンネルで、エンジェル税制の説明を動画で見ることができます。
エンジェル税制の節税メリット
エンジェル税制には、次の節税メリットがあります。
タイミング | 優遇措置 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|---|
投資時点の優遇措置 | 所得税の控除 | 〇 | × |
株式譲渡益の控除 | 〇 | × | |
売却時点の優遇措置 | 損失の通算 | 〇 | 〇 |
損失の繰越 | 〇 | 〇 |
投資時点の優遇措置は、所得税のみが対象です。売却時点の優遇措置は、所得税と住民税の両方が対象となっています。
投資時点の優遇措置
エンジェル税制には、投資時点で次の優遇措置があります。
- 所得税の控除(優遇措置A)
- 株式譲渡益の控除(優遇措置B)
優遇措置AとBのうち、どちらかを選択できます。AとB両方の優遇措置を同時に受けることはできません。
所得税の控除 | 株式譲渡益の控除 | |
---|---|---|
対象企業の要件 | 創業から3年未満で黒字化していない企業 | 創業から10年未満の企業 |
控除額 | 対象企業への投資額 - 2,000円 | 対象企業への投資額全額 |
控除対象となる投資額の上限 | 総所得金額×40%と1,000万円のいずれか低い方 | 上限なし |
所得税の控除
エンジェル税制の優遇措置Aを選んだ場合、所得税の控除を受けることができます。エンジェル税制対象企業への投資額を、その年の総所得金額から控除できます。(租税特別措置法第41条の19)
控除対象となる投資額の上限は、次のうちいずれか低い方になります。
- 総所得金額 × 40%
- 1,000万円
エンジェル税制で所得税の控除が受けられる対象企業の要件は、創業から3年未満で、黒字化していない企業です。
控除額と控除対象となる投資額の上限は、株式譲渡益の控除より所得税の控除の方が少なくなっています。ただし、所得税率が高い方は、所得税の控除を選んだ方が、節税対策として有効です。
株式譲渡益の控除
エンジェル税制対象企業への投資額を、その年の他の株式譲渡益から控除できます。(租税特別措置法第37条の13)
控除対象となる投資額の上限はありません。
エンジェル税制で株式譲渡益の控除が受けられる対象企業の要件は、創業から10年未満の企業です。
売却時点の優遇措置
エンジェル税制には、売却時点で次の優遇措置があります。
- 損失の通算
- 損失の繰越
損失の通算
エンジェル税制では、対象企業の株式売却によって生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できます。
上場企業の株式と同じ制度ですが、本来は未上場の株式は損益通算できません。エンジェル税制の対象企業であれば、未上場でも損益通算できます。
損失の繰越
エンジェル税制では、その年に通算しきれなかった損失について、翌年以降3年間にわたって株式譲渡益と通算できます。
上場企業の株式と同じ制度ですが、本来は未上場の株式は損失繰越できません。エンジェル税制の対象企業であれば、未上場でも損失繰越できます。
確定申告のやり方
エンジェル税制で所得税の控除や株式譲渡益の控除を受けるには、確定申告が必要です。
国税庁の公式サイトには「確定申告書等作成コーナー」があり、インターネット上から必要事項を入力して、所得税の確定申告書を作成できます。作成した確定申告書は、印刷して郵送や持参したり、e-Taxで電子申告できます。
所得税の控除
所得税の控除を受けるには、寄附金控除の欄に次の必要事項を入力します。
- 寄付年月日
- 寄付金の種類
- 支出した寄付金の金額
- 寄付先の所在地
- 寄付金の名称
エンジェル税制の優遇措置として所得税の控除を申告する場合、個人投資家は次の書類を添付して確定申告を行う必要があります。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
都道府県の知事印が押印された確認書 | ベンチャー企業 |
個人が一定の株主に該当しないことを確認した書類 | |
投資契約書の写し | |
株式移動状況明細書 | |
特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書 | 税務署 |
特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄付金控除額の計算明細書 |
国税庁の公式サイト「確定申告書等作成コーナー」には、次の但し書きがあります。
特定新規中小会社に対し出資した金額についての寄附金控除の適用を受けられる方につきましては、確定申告書等作成コーナーをご利用になれません。
つまり、エンジェル税制を利用して所得税の控除を申告するには、インターネットで確定申告書を作成することはできず、税務署へ行って申告することになります。
株式譲渡益の控除
エンジェル税制の優遇措置として株式譲渡益の控除を申告する場合、個人投資家は次の書類を添付して確定申告を行う必要があります。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
都道府県の知事印が押印された確認書 | ベンチャー企業 |
個人が一定の株主に該当しないことを確認した書類 | |
投資契約書の写し | |
株式移動状況明細書 | |
株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書 | 税務署 |
特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書 |
株式譲渡益の控除を受けるには、株式等の譲渡所得等を入力します。
確定申告書に入力する内容は基本的に上場株式の譲渡所得と同じですが、エンジェル税制で株式譲渡益の控除を受けるには、次の点が異なります。
- 「特定投資株式の取得に要した金額の控除の特例の適用がある。」にチェックを入れる
- 金融・証券税制(特定投資株式の取得金額控除)画面で必要項目を入力する
エンジェル税制に対応したファンド
株式投資型クラウドファンディングFUNDINNO(ファンディーノ)には、エンジェル税制の対象企業へ投資するファンドがあります。
FUNDINNOについて詳しくは次の記事をご覧ください。
コメント