楽天ボラティリティ・ファンドとは、平常時にVIX(恐怖指数)を売り、相場急落時にVIXを買うというユニークな戦略を採る投資信託です。このブログでは、本ファンドの仕組みをわかりやすくご紹介します。
VIXとは
VIXとは、市場参加者が予想するS&P500指数の将来のボラティリティをシカゴ・オプション取引所が数値化したものです。
ボラティリティとは変動幅の大きさのことです。
相場の先行きに不確実性が高まるほど、VIXは上昇します。リーマン・ショックや新型コロナウィルス感染症拡大のときに、VIXは大きく上昇しました。
VIXはシカゴ・オプション取引所に先物として上場されているので、VIX先物を売買することができます。
ただし、いつか来るであろう恐慌に備えてVIXを買い持ちしておく戦略はうまくいきません。なぜなら、平常時にVIXは緩やかに下降する性質があるからです。
VIXを買い、その数年後に相場の大暴落が来たとしても、その数年間にVIXはだいぶ下がっています。その後VIXが急上昇しても、買値までは上がらないことも多々あります。
楽天ボラティリティ・ファンド
楽天ボラティリティ・ファンドでは、このVIXの性質を利用した戦略を採っています。
平常時にはVIX先物を売り持ちすることにより、VIXの下降による収益を得ます。
いざ市場に異変が起こると買い持ちに切り替えることにより、相場暴落時には株式等のリスク資産に対するヘッジ効果が得られます。
実際に2020年3月の新型コロナウィルス感染症拡大で相場の先行きに不確実性が高まったとき、楽天ボラティリティ・ファンドの基準価額が大きく上昇しました。
楽天ボラティリティ・ファンドは2014年4月23日に設定されました。それ以来リーマン・ショック級の暴落が起きていなかったのですが、今回の新型コロナウィルス感染症拡大により、買い持ち切り替えに成功しました。
楽天ボラティリティ・ファンドには毎月分配型と資産成長型の2種類あり、それぞれ決算頻度が異なります。
項目 | 毎月分配型 | 資産成長型 |
---|---|---|
愛称 | 楽天ボルティ | |
委託会社 | 楽天投信投資顧問 | |
投資対象資産 | VIX先物 | |
投資対象地域 | グローバル(日本を含む) | |
投資形態 | ファンド・オブ・ファンズ | |
為替ヘッジ | あり(一部ヘッジ) | |
決算頻度 | 年12回(毎月) | 年2回 |
購入時手数料 | なし | |
信託財産留保額 | 0.5% | |
信託報酬 | 1.023% | |
成功報酬 | ハイ・ウォーターマーク超過額の11% | |
総経費率 | 1.30% | 1.33% |
分配金
楽天ボラティリティ・ファンドには毎月分配型と資産成長型の2種類あり、それぞれ決算頻度が異なります。
毎月分配型
楽天ボラティリティ・ファンド(毎月分配型)は毎月12日(休業日の場合は翌営業日)に決算を行い、収益分配を行います。楽天投信投資顧問が基準価額や市況動向を勘案して、収益分配額を決定します。
決算期 | 分配金 |
---|---|
2022年2月 | 50円 |
2022年1月 | 80円 |
2021年12月 | 80円 |
2021年11月 | 80円 |
2021年10月 | 80円 |
2021年9月 | 80円 |
2021年8月 | 80円 |
2021年7月 | 80円 |
2021年6月 | 80円 |
2021年5月 | 80円 |
2021年4月 | 80円 |
2021年3月 | 80円 |
2021年2月 | 80円 |
2021年1月 | 80円 |
「毎月分配型」という名前や毎期の分配金が一定であることから分かるとおり、楽天ボラティリティ・ファンド(毎月分配型)は利益を分配するのではなく、ファンドの純資産(元本)を取り崩して分配金を支払うタイプの投資信託です。そのため、分配金を支払う度に投資信託の純資産が減っていきます。
資産成長型
楽天ボラティリティ・ファンド(資産成長型)は毎年4月12日と10月12日(休業日の場合は翌営業日)に決算を行い、収益分配を行います。
決算期 | 分配金 |
---|---|
2021年10月 | 0円 |
2021年4月 | 0円 |
2020年10月 | 0円 |
楽天ボラティリティ・ファンド(資産成長型)は年2回決算を行うのですが、楽天投信投資顧問はあえて分配金を出していません。投資信託の純資産を取り崩してまで分配金を支払わない方針です。
成功報酬がかかる
投資信託としては珍しく、楽天ボラティリティ・ファンドには成功報酬額があります。
信託報酬に加えて、ハイ・ウォーターマーク方式を用いた成功報酬額を委託会社(楽天投信投資顧問)が徴収します。
成功報酬額は毎営業日に当該営業日の基準価額が、その時点のハイウォーターマークを超えた場合に、その超過額に11%を乗じた額となります。
ファンド・オブ・ファンズ
楽天ボラティリティ・ファンドはファンド・オブ・ファンズの投資形態をとっています。
直接VIX先物等を売買するのではなく、楽天ボラティリティ・ファンド(適格機関投資家専用)や上場投資信託(ETF)に投資しています。
そのため、楽天ボラティリティ・ファンドが投資する投資信託にも年0.057%程度の信託報酬がかかります。
販売会社
楽天ボラティリティ・ファンドは次の金融機関で販売しています。
販売会社 | 毎月分配型 | 資産成長型 |
---|---|---|
auカブコム証券 | 〇 | 〇 |
SBI証券 | 〇 | 〇 |
岡三オンライン証券 | 〇 | 〇 |
スルガ銀行 | 〇 | × |
PayPay銀行 | 〇 | 〇 |
楽天証券 | 〇 | 〇 |
評価
モーニングスター株式会社は独自の指標で投資信託を評価しています。モーニングスターは「楽天ボラティリティ・ファンド」を次のように評価しています。
3年 | 5年 | |
---|---|---|
レーティング | ||
リターン | やや高い | やや高い |
標準偏差 | 大きい | 大きい |
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参考文献
楽天投信投資顧問株式会社 (2022) 楽天ボラティリティ・ファンド(毎月分配型) / (資産成長型)
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