電力債とは、電気事業法に基づいて発行される社債です。この記事では、一般担保や購入方法をご紹介しています。各電力債の利回りと格付も比較しています。これを見れば、2019年のおすすめ電力債がわかります。
電力債とは
電力債とは、電気事業法に基づいて発行される債券です。
電力債には次の特徴があります。
- 一般担保付
- 10万円単位で購入できる
ほとんどの個人向け社債は100万円単位で購入しますが、電力債は10万円単位で購入できます。
電力債は一般担保が付いて安全性が高いうえ、購入単位も安いので初心者におすすめできる社債です。
一般担保とは
一般担保とは、他の債権者よりも優先して弁済が受けられる権利のことです。
電力債には、電気事業法第27条の30(第6節 一般担保)で定められた一般担保が付いています。
第六節 一般担保
第二十七条の三十 小売電気事業、一般送配電事業及び発電事業のいずれも営む者たる会社(次項及び第三項において「兼業会社」という。)の社債(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第六十六条第一号に規定する短期社債を除く。次項及び第三項において同じ。)の社債権者は、その会社の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 兼業会社の営む小売電気事業、一般送配電事業若しくは発電事業の譲渡しがあり、又は兼業会社について分割があつたときは、次の各号に掲げる会社のいずれかに該当するものが当分の間発行する社債の社債権者は、それぞれ、その会社の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
一 当該譲渡し又は分割により小売電気事業、一般送配電事業又は発電事業の全部又は一部を譲り受け、又は承継した会社(当該譲り受け、又は承継した小売電気事業、一般送配電事業又は発電事業を営むことを目的として設立されたものに限り、兼業会社であるものを除く。)
二 当該譲渡し又は分割をした会社であつて、当該譲渡し又は分割の後も引き続き小売電気事業、一般送配電事業又は発電事業を営むもの(兼業会社であるものを除く。)
三 前二号に掲げる会社を子会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第三号に規定する子会社をいう。)とする会社であつて、小売電気事業、一般送配電事業及び発電事業のいずれも営まないもの
3 兼業会社の営む小売電気事業、一般送配電事業若しくは発電事業の譲渡しがあり、又は兼業会社について分割があつたとき(その会社が当該譲渡し又は分割の後も兼業会社であるときを除く。)は、当該譲渡し又は分割の前にその会社が発行した社債であつて当該譲渡し又は分割の後もその会社が引き続き有する債務に係るものの社債権者は、その会社の財産について他の債権者に先立つて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
4 前三項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
一般担保が付いている電力債は、電力会社が破綻した場合でも、お金が返ってくる可能性が高いです。ほとんどの社債が無担保であるのに対して、一般担保が付いている電力債は安心ということになります。
一般担保の廃止
電力会社が発行する社債(電力債)のうち、一般担保付社債の新規発行が2025年4月から認められなくなります。一般担保が無くなることでリスクが高まると市場が受け止めれば、より高い利率での社債発行を迫られる可能性があります。
電力債の利回り
電力債の利回りは、発行する電力会社や償還日までの期間、発行時期などによって異なります。
一般担保が付いた電力債は、無担保社債より利回りが低くなります。信用リスクが低い債券は、低利回りでも購入されるからです。
最近の発行状況によると、期間3年で年率0.14%(税引前)というのが一般的な電力債の利回りです。
電力債の格付け
電力債を発行する電力会社は、格付会社にお金を払って格付を依頼します。格付会社は電力会社の支払能力等を精査して、格付けを行います。
第三者である格付会社が公平・中立の格付けを行うことで、電力債の購入者が信用リスクを判断することができます。
格付には、長期格付と短期格付の2種類あります。長期格付は発行体格付とも呼ばれ、1年以上の長期間にわたる支払能力を格付したものです。短期格付は、1年未満の短期間における支払能力を格付したものです。
日本には次の2つの格付会社があります。
- 格付投資情報センター(R&I)
- 日本格付研究所(JCR)
格付投資情報センター(R&I)による電力会社の発行体格付は、次のようになっています。
発行体格付 | 電力会社 |
---|---|
AA | 沖縄電力 |
AA- | 中部電力 |
A+ | 東北電力 北陸電力 関西電力 中国電力 四国電力 |
A | 北海道電力 九州電力 |
A- | 東京電力エナジーパートナー 東京電力ホールディングス 東京電力パワーグリッド 東京電力リニューアブルパワー |
※2023年12月2日現在
日本格付研究所(JCR)による電力会社の長期格付は、次のとおりです。
格付 | 電力会社 |
---|---|
AA | 東北電力 北陸電力 中部電力 関西電力 中国電力 四国電力 |
AA- | 北海道電力 九州電力 |
A | 東京電力エナジーパートナー 東京電力ホールディングス 東京電力パワーグリッド 東京電力リニューアブルパワー |
※2023年12月2日現在
電力債の購入
電力債は販売する都度、販売会社が異なります。次の証券会社で販売することが多いです。
- SMBC日興証券
- 大和証券
- 野村證券
- みずほ証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
株式は購入に手数料がかかり、その手数料は証券会社によって異なりますが、電力債の購入に手数料はかかりませんので、どこの証券会社で買っても同じです。
ただし、各証券会社ごとに電力債の割り当て数が異なるので、購入が困難な証券会社もあります。
電力債の発行状況
最近の電力債の発行状況は、次のようになっています。
発行日 | 発行体 | 利率 | 期間 |
---|---|---|---|
2024年6月25日 | 四国電力 | 0.65% | 3年 |
2023年6月23日 | 東北電力 | 0.75% | 3年 |
2023年12月25日 | 北海道電力 | 0.45% | 3年 |
2023年12月25日 | 四国電力 | 0.40% | 3年 |
2023年12月22日 | 東北電力 | 0.43% | 3年 |
2023年12月22日 | 九州電力 | 0.43% | 3年 |
2023年12月20日 | 北陸電力 | 0.69% | 5年 |
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