九州電力が個人向け社債「九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)」を2023年12月22日に発行します。この記事では、本電力債の利回りや格付け、購入方法をご紹介します。
銘柄
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)
発行体
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)の発行体(債券の発行元)は九州電力株式会社です。
九州電力は福岡県、長崎県、大分県、佐賀県、宮崎県、熊本県、鹿児島県の九州7県を事業地域とする電力会社で、「きゅうでん」とも呼ばれています。販売電力量では東京電力、関西電力、中部電力につぐ第4位の電力会社です。九州は鉄鋼・科学・自動車・半導体関連の工場が多く、そのため産業向けの割合が高くなっています。
会社名 | 九州電力株式会社 |
本店所在地 | 福岡県福岡市中央区渡辺通2-1-82 |
設立 | 昭和26年5月1日 |
資本金 | 2,373億円 |
総資産額 | 42,788億円 |
上場市場 | 東証1部 |
証券コード | 9508 |
発行体格付
九州電力株式会社の発行体格付は、電力会社の中ではやや低い方に位置します。
発行体格付 | 電力会社 |
---|---|
AA | 沖縄電力 |
A+ | 東北電力 |
北陸電力 | |
中部電力 | |
関西電力 | |
中国電力 | |
四国電力 | |
A | 九州電力 |
北海道電力 | |
BBB+ | 東京電力ホールディングス |
東京電力パワーグリッド |
日本格付研究所(JCR)による長期発行体格付においても、九州電力株式会社はやや低い格付となっています。
長期格付 | 電力会社 |
---|---|
AA | 東北電力 |
北陸電力 | |
中部電力 | |
中国電力 | |
四国電力 | |
AA- | 九州電力 |
北海道電力 | |
関西電力 | |
A | 東京電力パワーグリッド |
東京電力ホールディングス |
一般担保付
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)は、電気事業法第27条の30に基づいて発行されている電力債(一般担保付社債)です。一般担保付社債とは、他の債権者よりも優先して弁済が受けられる権利が付いた社債です。社債の発行元である企業が破綻した場合、社債や株式の種類によって弁済順位が異なります。具体的には、以下に示す順序となっています。
- 一般担保付社債(シニア債)
- 無担保社債(メザニン債)
- 劣後債(ジュニア債)
- 優先株
- 普通株
企業が発行するほとんどの社債は無担保社債です。銀行などの一部金融機関は劣後債も発行しています。電力債はその中でも高い弁済順位を誇っていて、リスクが低い社債となっています。電力債は一般担保が付いて安全性が高いうえ、購入単位も安いので初心者にもおすすめできる社債です。
期間
3年
利率
年0.43%(税引前)
発行日
2023年12月22日
利払日
毎年6月25日と12月25日の年2回
償還日
2026年12月25日
発行価格
額面100円につき100円
申込単位
10万円単位
一般的な社債は100万円単位で購入できます。個人にとっては、まとまった資金が必要となります。しかし、電力会社が発行する電力債は10万円単位で購入できるものがほとんどです。九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)も10万円単位で買えるので、個人で買いやすい社債となっています。
格付
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)は、2つの格付機関から長期個別債務格付を取得しています。
格付会社 | 格付 |
---|---|
株式会社格付投資情報センター | A |
株式会社日本格付研究所 | AA- |
R&Iの格付とJCRの格付が異なりますが、これはJCRが甘めの格付を行う傾向があるからです。どちらかというと、R&Iの格付けを参考にした方がよいでしょう。
格付投資情報センター
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)は、株式会社格付投資情報センター(R&I)から「A」の長期個別債務格付を取得しています。R&Iによる格付事由は以下のとおりです。
2018年度に原発4基の稼働体制を確保しコスト競争力や環境規制への対応力が強い。独禁法に基づく課徴金納付命令での財務影響は限定的だった一方、特重施設の工事に伴う原子力利用率低下と資源高での価格転嫁不足が重なり、2022年度は最終赤字を計上。特重工事の財務負担も重荷で資本負債構成は改善の余地が大きい。特重施設の完成で2023年度は原子力利用率が向上し大幅な収益増が見込まれる。ウクライナ危機後の料金改定を見送り燃調上限超過による価格転嫁不足が生じる懸念は残るものの、2019年4月に規制料金を含む値下げの料金改定を実施済みで、収支構造は比較的安定している。格付の方向性は安定的としているが、原発の安定稼働を維持し財務改善が進むようなら格付にプラスに働く。2024年4月までに原発4基で基準地震動に関する設置変更許可を取得し、バックフィット制度に適応する必要がある。その進捗と原子力利用率への影響、財務構成の改善ペースなどを確認していく。
日本格付研究所
九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)は、株式会社日本格付研究所(JCR)から「AA-」の長期個別債務格付を取得しています。JCRによる格付事由は以下のとおりです。
九州地域を主な供給区域とする。収益基盤が強化されている。川内原発 1・2 号機および玄海原発 3・4 号機は特重施設が完工しており、原発 4 基体制が確立している。ICT サービスや都市開発事業の収益貢献度が増す中、エネルギーサービス事業では環境性や経済性を有する電源を活用することで高い競争力を発揮し、今後は本格的な業績回復局面を迎えると想定される。財務面では 23/3 期に自己資本を毀損し、改善の進捗が後退したとはいえ、財務基盤の強化に注力する方針が示されている。利益の拡大やフリーキャッシュフローの確保を通じ、財務構成の改善を加速できるか注目していく。
発行額
100億円
募集期間
2023年12月4日~2023年12月21日
社債発行実績
九州電力株式会社は、以下に示す個人向け社債を発行しています。
回号 | 発行日 | 利率 | 期間 |
---|---|---|---|
第486回社債 | 2019年12月25日 | 0.14% | 3年 |
第479回社債 | 2019年6月25日 | 0.14% | 3年 |
第473回社債 | 2018年12月25日 | 0.14% | 3年 |
第464回社債 | 2018年6月25日 | 0.14% | 3年 |
第458回社債 | 2017年12月25日 | 0.14% | 3年 |
第452回社債 | 2017年6月26日 | 0.14% | 3年 |
第440回社債 | 2016年6月24日 | 0.15% | 3年 |
第435回社債 | 2015年12月25日 | 0.33% | 3年 |
第415回社債 | 2010年12月15日 | 0.35% | 3年 |
第406回社債 | 2008年12月15日 | 1.04% | 3年 |
第397回社債 | 2007年12月14日 | 1.04% | 3年 |
第390回社債 | 2006年12月25日 | 1.10% | 3年 |
第386回社債 | 2005年12月22日 | 0.50% | 3年 |
第381回社債 | 2004年12月24日 | 0.30% | 3年 |
第375回社債 | 2003年12月25日 | 0.35% | 3年 |
第370回社債 | 2002年12月22日 | 0.20% | 3年 |
第364回社債 | 2001年12月25日 | 0.30% | 3年 |
第357回社債 | 2000年12月19日 | 0.70% | 3年 |
機関投資家向けを含む過去の社債発行実績について詳しくは、下記の公式サイトでご確認ください。
公式 九州電力 社債明細表
購入方法
次の証券会社で九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)を販売しています。
金融機関 | 引受金額 |
---|---|
SMBC日興証券 | 26億円 |
大和証券 | 16億円 |
野村證券 | 16億円 |
みずほ証券 | 16億円 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 14億円 |
FFG証券 | 4億5,000万円 |
岡三証券 | 3億円 |
西日本シティTT証券 | 3億円 |
東洋証券 | 1億5,000万円 |
各証券会社ごとに社債の割り当て数が異なるので、入手が困難な証券会社もあります。
株式は購入に手数料がかかり、その手数料は証券会社によって異なりますが、社債の購入には手数料がかかりません。販売会社は発行体(債券の発行元)から引受手数料を得ているので、購入者からは手数料を取らないからです。九州電力株式会社第523回社債(一般担保付)の場合、引受手数料は社債の金額100円につき金30銭です。
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参考文献
九州電力株式会社 (2023) 九州電力株式会社第523回社債(個人投資家向け社債)の発行についてお知らせします
株式会社格付投資情報センター (2023) NEWS RELEASE
株式会社日本格付研究所 (2023) News Release
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