通常の国債は、発行時の元金額が償還まで変わりません。これに対して、物価連動国債は元金額が物価の動向に連動して増減します。この記事では、物価連動国債の特徴と購入方法をご紹介します。
物価連動国債とは
期間 | 10年 |
最低額面金額 | 10万円 |
利払日 | 6か月毎の10日 |
発行日 | 10日 |
物価連動国債の利払いは年2回で、利子の額は各利払時の想定元本額に表面利率を乗じて算出します。
表面利率は固定なので、物価上昇により想定元本額が増加すれば、利子の額も増えます。
満期までの期間は10年です。
物価連動国債の元金額は、発行時の元金額に連動係数を乗じた額になります。連動係数は消費者物価指数(CPI)から算出されます。
消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する家計に係る財およびサービスの価格等(消費税含む)を総合した物価の変動を時系列的に測定した指標です。総務省が毎月調査し発表しています。消費者物価指数は、各種経済施策や公的年金の改定等に利用されています。
消費者物価指数のうち生鮮食品を除く総合指標は、内閣府が公表する景気動向指数の遅行系列に採用されています。
フロア
償還時の連動係数が1を下回る場合、物価連動国債は額面金額で償還されます。
この元本保証のことを「フロア」といいます。
フロアが設定されている物価連動国債のことを「元本保証型物価連動国債」といいます。
発行日
物価連動国債の発行日は、原則として毎月10日です。
10日が銀行休業日の場合は、翌営業日が発行日となります。
2024年の発行
2024年は次の物価連動国債が発行されています。
記号 | 発行日 | 表面利率 |
---|---|---|
第28回 | 2024年2月6日 | 0.005% |
BEI
市場が推測する期待インフレ率をブレークイーブンインフレ率(BEI)といいます。
購入
物価連動国債は、野村證券などの証券会社で購入できます。
物価連動国債の購入に手数料はかかりません。
英語
英語で物価連動国債のことを「Inflation-linked government bonds」といいます。
チャート
物価連動国債の複利利回りとBEI(ブレークイーブンインフレ率)のチャートは、次をご覧ください。
インデックス
物価連動国債のインデックスには次のものがあります。
NOMURA物価連動国債インデックス
NOMURA物価連動国債インデックス(NOMURA J-TIPS Index)とは、日本国が発行した物価連動国債のみを対象とする投資収益指数です。
2004年3月31日時点を基準値100として算出されています。
物価連動国債ファンド
物価連動国債を投資対象とする投資信託には次のものがあります。
- 東京海上セレクション・物価連動国債
- eMAXIS国内物価連動国債インデックス
- 日本物価連動国債ファンド
- MHAM物価連動国債ファンド
東京海上セレクション・物価連動国債
「東京海上セレクション・物価連動国債」は、主に日本の物価連動国債に投資を行い、将来のインフレリスクを回避することにより実質的な資産価値の保全を図りつつ、安定した収益の確保を目指す投資信託です。
愛称
うんよう博士
委託会社
東京海上アセットマネジメント株式会社
設定日
2004年11月17日
決算日
10月26日(休業日の場合は翌営業日)
信託期間
無期限
購入時手数料
なし
信託財産留保額
なし
信託報酬
年率0.275%
実質コスト
第19期(2022年10月27日~2023年10月26日)における「東京海上セレクション・物価連動国債」の実質コストは年0.442%です。
項目 | 比率 |
---|---|
信託報酬 | 0.275% |
その他費用 | 0.006% |
合計 | 0.281% |
分配金
「東京海上セレクション・物価連動国債」の分配金支払実績は以下のとおりです。
決算期 | 決算日 | 分配金 |
---|---|---|
第19期 | 2023年10月26日 | 0円 |
第18期 | 2022年10月26日 | 0円 |
第17期 | 2021年10月26日 | 0円 |
第16期 | 2020年10月26日 | 0円 |
第15期 | 2019年10月28日 | 0円 |
NISA
少額投資非課税制度(NISA)は、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類に分類されています。
成長投資枠のNISAは、株式と投資信託(整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除く)が対象です。「東京海上セレクション・物価連動国債」は、成長投資枠の対象商品です。
つみたて投資枠のNISAでは、一定の条件に基づいて金融庁が定めた対象商品のみに投資できます。「東京海上セレクション・物価連動国債」は、NISA(つみたて投資枠)の対象商品ではありません。
iDeCo
個人型確定拠出年金(iDeCo)は金融機関によって取扱商品が異なります。「東京海上セレクション・物価連動国債」をiDeCoで取り扱っている金融機関はありません。
販売会社
以下に示す金融機関で「東京海上セレクション・物価連動国債」を販売しています。
iDeCoでの取扱い金融機関なし
eMAXIS国内物価連動国債インデックス
eMAXIS国内物価連動国債インデックスは、NOMURA物価国債インデックス(フロアあり)に連動することを目指すインデックスファンドです。
委託会社
三菱UFJアセットマネジメント株式会社
投資形態
ファミリーファンド
ベンチマーク
NOMURA物価国債インデックス(フロアあり)
設定日
2014年11月6日
決算日
毎年1月26日(休業日の場合は翌営業日)
信託期間
無期限
購入時手数料
なし
信託財産留保額
なし
信託報酬
年率0.44%以内
実質コスト
第10期(2023年1月27日~2024年1月26日)におけるeMAXIS国内物価連動国債インデックスの実質コストは年0.442%です。
項目 | 比率 |
---|---|
信託報酬 | 0.440% |
その他費用 | 0.003% |
合計 | 0.443% |
分配金
eMAXIS国内物価連動国債インデックスの分配金支払実績は以下のとおりです。
決算期 | 決算日 | 分配金 |
---|---|---|
第10期 | 2024年1月26日 | 0円 |
第9期 | 2023年1月26日 | 0円 |
第8期 | 2022年1月26日 | 0円 |
第7期 | 2021年1月26日 | 0円 |
第6期 | 2020年1月27日 | 0円 |
第5期 | 2019年1月28日 | 0円 |
NISA
少額投資非課税制度(NISA)は、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類に分類されています。
成長投資枠のNISAは、株式と投資信託(整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除く)が対象です。「eMAXIS国内物価連動国債インデックス」は、成長投資枠の対象商品です。
つみたて投資枠のNISAでは、一定の条件に基づいて金融庁が定めた対象商品のみに投資できます。「eMAXIS国内物価連動国債インデックス」は、NISA(つみたて投資枠)の対象商品ではありません。
iDeCo
個人型確定拠出年金(iDeCo)は金融機関によって取扱商品が異なります。「eMAXIS国内物価連動国債インデックス」をiDeCoで取り扱っている金融機関はありません。
iDeCoでの取扱い金融機関なし
日本物価連動国債ファンド
日本物価連動国債ファンドは、日本の物価連動国債を投資対象とする投資信託です。
委託会社
大和アセットマネジメント株式会社
設定日
2013年9月5日
決算日
毎年3月10日および9月10日(休業日の場合翌営業日)
信託期間
2050年9月9日まで
購入時手数料
1.1%を上限として販売会社が定める
信託財産留保額
0.1%
信託報酬
年率0.594%以内
実質コスト
第21期(2023年9月12日~2024年3月11日)における「日本物価連動国債ファンド」の実質コストは、以下のとおりです。
項目 | 比率 |
---|---|
信託報酬 | 0.213% |
その他費用 | 0.003% |
合計 | 0.216% |
上記は半年間における実質コストです。1年間だと0.432%に相当します。
NISA
少額投資非課税制度(NISA)は、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類に分類されています。
成長投資枠のNISAは、株式と投資信託(整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除く)が対象です。「日本物価連動国債ファンド」は、成長投資枠の対象商品です。
つみたて投資枠のNISAでは、一定の条件に基づいて金融庁が定めた対象商品のみに投資できます。「日本物価連動国債ファンド」は、NISA(つみたて投資枠)の対象商品ではありません。
NISA(成長投資枠)の対象
NISA(つみたて投資枠)の対象外
MHAM物価連動国債ファンド
MHAM物価連動国債ファンドは、日本の物価連動国債を投資対象とする投資信託です。
愛称
未来予想
委託会社
アセットマネジメントOne株式会社
設定日
2004年6月1日
決算日
毎年3月および9月の各25日(休業日の場合は翌営業日)
信託期間
無期限
購入時手数料
1.1%を上限として販売会社が定める
信託財産留保額
なし
信託報酬
年率0.66%以内
実質コスト
第39期(2023年9月26日~2024年3月25日)における「MHAM物価連動国債ファンド」の実質コストは、以下のとおりです。
項目 | 比率 |
---|---|
信託報酬 | 0.219% |
その他費用 | 0.001% |
合計 | 0.219% |
上記は半年間における実質コストです。1年間だと0.438%に相当します。
NISA
少額投資非課税制度(NISA)は、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2種類に分類されています。
成長投資枠のNISAは、株式と投資信託(整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除く)が対象です。「MHAM物価連動国債ファンド」は、成長投資枠の対象商品です。
つみたて投資枠のNISAでは、一定の条件に基づいて金融庁が定めた対象商品のみに投資できます。「MHAM物価連動国債ファンド」は、NISA(つみたて投資枠)の対象商品ではありません。
ETF
日本の物価連動国債を投資対象とする上場投資信託(ETF)はありません。
米国物価連動国債(TIPS)
米国の物価連動国債は、Treasury Inflation-Protected Securities(TIPS)といいます。
期間 | 5年、10年、30年 |
最低額面金額 | 100ドル |
米国ETF
米国物価連動国債(TIPS)を投資対象とする米国ETFには次のものがあります。
シンボル | 銘柄 |
---|---|
TIP | iShares TIPS Bond ETF |
VTIP | Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities Index Fund ETF Shares |
TIP
「iShares TIPS Bond ETF(iシェアーズ 米国物価連動国債ETF)」は、米国物価連動国債(TIPS)を投資対象とする米国ETFです。
シンボル
TIP
運用会社
BlackRock
取引所
NYSE Arca
経費率
0.19%
チャート
Figure 1. TIP stock chart from finviz
取扱会社
VTIP
「Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities Index Fund ETF Shares(バンガード 米国短期インフレ連動債ETF)」は、TIPSを投資対象とする米国ETFです。
シンボル
VTIP
運用会社
Vanguard
取引所
NASDAQ
経費率
0.05%
チャート
Figure 2. VTIP stock chart from finviz
取扱会社
関連記事
参考文献
財務省 (2021) 物価連動国債
野村證券株式会社 (2021) NOMURA J-TIPS Index
東京海上アセットマネジメント株式会社 (2024) 東京海上セレクション・物価連動国債(愛称:うんよう博士)
三菱UFJアセットマネジメント株式会社 (2021) eMAXIS 国内物価連動国債インデックス
大和アセットマネジメント株式会社 (2021) 日本物価連動国債ファンド
アセットマネジメントOne株式会社 (2021) MHAM物価連動国債ファンド(未来予想)
Bureau of the Fiscal Service (2021) Treasury Inflation-Protected Securities (TIPS)
ブラックロック・ジャパン株式会社 (2021) iシェアーズ 米国物価連動国債 ETF
Vanguard Group, Inc. (2021) Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities ETF (VTIP)
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