不動産セキュリティ・トークン(不動産ST)とは、不動産の有価証券を電子的な記録としてデジタル化したもので、ブロックチェーンを介して取引されます。
金融商品取引法
金融商品取引法(金商法)の改正により、電子記録移転有価証券表示権利等と電子記録移転権利が新たに規定されて、セキュリティトークンの金商法上の位置付けが明確化されました。
電子記録移転有価証券表示権利等は金商法第2条第1項証券(第1項有価証券)に該当し、株券や社債券のような有価証券として発行されたセキュリティトークンを指します。
電子記録移転権利は金商法2条2項に規定する「みなし有価証券」(第2項有価証券)に該当し、信託の受益権や集団投資スキーム持ち分などの形態で発行されたセキュリティトークンを意味します。
ブロックチェーン
SBI証券とケネディクスは、三菱UFJ信託銀行が提供するブロックチェーン基盤「Progmat(プログマ)」を活用して、受益証券発行信託スキームを用いた資産裏付型セキュリティトークンの公募について協業しています。
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| 三菱UFJ信託銀行 | ブロックチェーン基盤「Progmat」のシステム提供・保守 受益証券発行信託の受託業務(資産裏付型STの名簿管理を含む) 資産裏付型STのカストディ業務(秘密鍵の管理等) |
| SBI証券 | 資産裏付型STの取扱い業務 資産裏付型STの保護預り業務 |
| ケネディクス | 原資産となる不動産の拠出(オリジネーター) 対象資産のアセットマネジメント業務 対象資産に係る投資家向け情報開示業務 |
税金
ALTERNA(オルタナ)は不動産セキュリティ・トークン(不動産ST)であるため、税金は申告分離課税(選択可)となります。不動産STと似た商品である不動産クラウドファンディングは総合課税であるため、税金上は不動産クラウドファンディングより有利に扱われます。ただし、不動産クラウドファンディングは雑所得であるため、給与所得者であれば年間20万円までなら申告不要制度がありますが、不動産STには申告不要制度はありません。
不動産STは上場株式等の譲渡損益等との損益通算ができます。また、一定期間内の損益通算もできます。
| 不動産ST | 不動産クラファン | |
|---|---|---|
| 課税方式 | 申告分離課税 (選択可) |
総合課税 |
| 損益通算 | あり | なし |
| 申告不要制度 | なし | あり |
日本STO協会
一般社団法人日本STO協会は、金融商品取引法(金商法)第78条第1項の規定に基づき、金融庁から認定金融商品取引業協会として認定を受けた自主規制機関です。
自主規制業務等を通じて、電子記録移転権利をはじめとするセキュリティトークンの取引を公正・円滑にすることを目的としています。
次の企業が正会員として日本STO協会に加入しています。
- 三菱UFJ eスマート証券
- SMBC日興証券
- SBI証券
- 大和証券
- 東海東京証券
- 野村證券
- Hash DasH
- マネックス証券
- みずほ証券
- 三井住友信託銀行
- 三菱UFJ信託銀行
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 楽天証券
リスク
不動産STには、以下に示すリスクがあります。
- 価格変動リスク
- 流動性リスク
- 信用リスク
価格変動リスク
不動産STの価格は、投資対象不動産の鑑定評価額の上昇・下落に応じて変動するリスクがあります。
店頭取引での不動産STの価格は投資対象の不動産の鑑定評価額に基づいて設定されます。通常、不動産鑑定士の鑑定に基づく鑑定評価額から負債などを控除したNet Asset Value、略してNAV(純資産額)が、不動産STの取引価格を決定する際の基準となります。
| 不動産投資 | 価格変動リスク |
|---|---|
| 不動産投資クラウドファンディング | |
| 現物不動産 | |
| 不動産ST | |
| REIT |
流動性リスク
不動産STは、金融商品取引所に上場していないため、東京証券取引所などで売買できません。そのため、J-REITや上場株式と比較すると、売買流動性および譲渡制限に関するリスクがあり、投資家の希望する時期や価格で売買ができるとは限りません。
| 不動産投資 | 流動性リスク |
|---|---|
| REIT | |
| 現物不動産 | |
| 不動産ST | |
| 不動産投資クラウドファンディング |
信用リスク
トークンを発行する特別目的会社(SPC)や事業者が経営破綻した場合、賃料収入や売却代金が投資家に分配されない可能性があります。
| 不動産投資 | 信用リスク |
|---|---|
| 現物不動産 | |
| REIT | |
| 不動産ST | |
| 不動産投資クラウドファンディング |
販売会社
- ALTERNA
- KDX不動産セキュリティ・トークン
- SBI証券
- Hash DasH
三井物産のデジタル証券
三井物産のデジタル証券(ALTERNA:オルタナ)は、都心の大型不動産や物流施設、発電所といったインフラなど安定的な賃料等収入が期待できる実物資産に、スマートフォンで簡単に、利回りを目的に投資できる個人向けの資産運用サービスです。
オルタナで取扱う「三井物産のデジタル証券」は、三井物産グループが厳選した安定資産を裏付けとした小口化商品です。「三井物産のデジタル証券」は、三井物産株式会社の子会社である三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社により組成・販売されるものです。「安定資産」とは、不動産やインフラなど、ALTERNA(オルタナ)が提供を予定する金融商品の投資対象資産を指し、当資産の持続的な稼働により、中長期での安定的な投資成果の獲得を期待するものです。なお、ALTERNA(オルタナ)が提供する金融商品は元本保証や将来の投資成果を保証するものではありません。また、「三井物産のデジタル証券」の保有者情報等はブロックチェーン上に記録されており、証券の発行・譲渡・償還等が発生した場合にはブロックチェーン上の情報を書き換えることにより権利の移転が実現されます。
オルタナで扱う商品において、ファンドとは、投資対象資産を保有している企業の倒産リスクから切り離す(いわゆる倒産隔離)を行うために設立されたSPCという事業体のことを指します。SPCの形態には合同会社、特定目的会社、受益証券発行信託など複数の形態が存在します。「三井物産のデジタル証券」では組成時点での法整備状況や商品性の観点でデジタル証券に最も適していると考える「受益証券発行信託」の仕組みを採用しています。
運用期間中の配当は、テナントからの賃料収入等の賃貸事業収入から、物件管理費用・ファンド運用費用・借入金利息返済等の費用を控除した金額を利益配当として分配します。
運用資産売却時は、売却益が生じた場合は償還時配当として分配金に加算し、売却損が発生した場合は出資金元本が控除されます。
ALTERNA(オルタナ)の運営会社は三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社です。
ALTERNAのデジタル証券は受益証券発行信託スキームのため、課税区分は申告分離課税です。上場株式等と同様に特定口座(源泉徴収あり・なし)での取引が可能です。源泉徴収ありの場合は、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。確定申告して、他の上場株式等の譲渡損失と損益通算することもできます。
| 社名 | 三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 |
| 所在地 | 京都中央区日本橋堀留町1-9-8 人形町PREX 4階 |
| 資本金 | 30億円(2023年5月10日時点) |
| 代表者 | 代表取締役社長 上野貴司 |
| 設立 | 2020年4月 |
| 事業概要 | デジタル技術を活用した、不動産・インフラを中心とする実物資産のアセットマネジメント事業 |
| 出資比率 | 三井物産 53% LayerX 35% SMBC日興証券 5% 三井住友信託銀行 5% JA三井リース1% イデラキャピタルマネジメント1% |
おすすめ度:
KDX不動産セキュリティ・トークン
KDX不動産セキュリティ・トークンはKDX STパートナーズ株式会社が運営しています。KDX STパートナーズ株式会社の事業内容は、不動産等に係る投資型クラウドファンディング・プラットフォームの運営および不動産等に係るアセットマネジメント事業です。
KDX不動産セキュリティ・トークンのデジタル証券は受益証券発行信託スキームのため、課税区分は申告分離課税です。上場株式等と同様に特定口座(源泉徴収あり・なし)での取引が可能です。源泉徴収ありの場合は、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。確定申告して、他の上場株式等の譲渡損失と損益通算することもできます。
| 社名 | KDX STパートナーズ株式会社 |
| 所在地 | 東京都千代田区内幸町二丁目1番6号 日比谷パークフロント |
| 資本金 | 1億円 |
| 代表者 | 代表取締役社長 中尾彰宏 |
| 設立 | 2017年6月26日 |
| 株主 | ケネディクス株式会社 |
| 登録・免許 | 投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業 総合不動産投資顧問業 宅地建物取引業 貸金業 |
| 加入団体 | 一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会 日本貸金業協会会員 |
おすすめ度:
SBI証券
SBI証券は不動産STOを販売しています。STOとは、Security Token Offeringの略称で、不動産投資の資金調達をセキュリティ・トークン(デジタル証券)で公募することです。
SBI証券が取り扱ったST商品の一覧は次のとおりです。
- いちご・レジデンス・トークン 中目黒・神楽坂・明大前・代々木・三軒茶屋(譲渡制限付)
- MFシェア 駒込レジデンス(譲渡制限付)
- いちご・レジデンス・トークン麻布・白金・日本橋
- ALTERNAレジデンス 新宿中落合・経堂・門前仲町
- 神戸六甲アイランドDC
- ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南(譲渡制限付
Hash DasH
Hash DasHは、Hash DasH株式会社が提供している不動産セキュリティ・トークン(不動産デジタル証券)です。
Hash DasHのデジタル証券は匿名組合スキームのため、課税区分は雑所得で、総合課税の対象になります。分配金の受け取り時に源泉所得税(20.42%)が源泉徴収されますが、これはあくまで仮払いです。原則として確定申告を行い、他の所得と合算して総合課税となります。総合課税のため、所得が多いほど税率が高くなります。なお、分配金のうち出資の払い戻しに該当する部分については、源泉徴収されることはなく、確定申告の対象にもなりません。
| 社名 | Hash DasH株式会社 |
| 所在地 | 東京都千代⽥区九段北⼀丁⽬13番5号 ヒューリック九段ビル8階 |
| 資本金 | 7500万円 |
| 代表者 | 代表取締役社⻑ 實井智宏 |
| 設立 | 2019年1月30日 |
| 主要株主 | Hash DasH Holdings 株式会社 |
| 登録・免許 | 第一種金融商品取引業 第二種金融商品取引業 |
| 加入団体 | ⼀般社団法⼈ ⽇本STO協会 正会員 |
おすすめ度:
自己資本比率が高い
赤字企業
renga
rengaはデジタル証券株式会社が提供している不動産セキュリティ・トークン(不動産デジタル証券)です。
rengaのデジタル証券は匿名組合スキームのため、課税区分は雑所得で、総合課税の対象になります。分配金の受け取り時に源泉所得税(20.42%)が源泉徴収されますが、これはあくまで仮払いです。原則として確定申告を行い、他の所得と合算して総合課税となります。総合課税のため、所得が多いほど税率が高くなります。なお、分配金のうち出資の払い戻しに該当する部分については、源泉徴収されることはなく、確定申告の対象にもなりません。
| 社名 | デジタル証券株式会社 |
| 所在地 | 東京都港区赤坂四丁目15番1号 赤坂ガーデンシティ3階 |
| 資本金 | 12億円 |
| 代表者 | 代表取締役CEO 山本浩平 |
| 設立 | 2020年11月12日 |
| 登録・免許 | 第一種金融商品取引業 第二種金融商品取引業 投資運用業 |
| 加入団体 | 一般社団法人 日本STO協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会 一般社団法人 不動産証券化協会(準会員) |
おすすめ度:
ASTOMO
ASTOMO(アストモ)は三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社と株式会社スマートプラスが共同で運営する、個人のお客さま向けのデジタル証券(セキュリティ・トークン)取引サービスです。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が厳選したデジタル証券「不動産ST(セキュリティ・トークン)」をスマートプラスが販売しています。口座開設及び取引は、お客さまと株式会社スマートプラスで直接行います。
START
「START」はセキュリティ・トークンのセカンダリ(二次流通)市場で、大阪デジタルエクスチェンジが運営する私設取引システム(PTS)です。
既発ST(セキュリティ・トークン)とは、すでに発行されているセキュリティ・トークンのことを指します。STARTで取引されるSTもありますが、証券会社との相対(OTC)取引となる銘柄もあります。
STARTに参加している証券会社に口座開設をしている投資家は、いつでも取り扱っている銘柄の注文を発注することができます。
STARTで取り扱われない既発STは、証券会社との相対(OTC)取引により売買されます。このため、投資家が保有するセキュリティトークンを売却する場合、多くの場合、取得元の証券会社に買い取ってもらう等の方法に限られます。
付け合せ方式
節立会(板寄せ方式)2回/日
注文の種類
指値注文または成行注文
取引時間
STARTの取引時間は以下のとおりです。
| セッション | 注文受付開始時刻 | 執行時刻 |
|---|---|---|
| セッション1 | 10:00 | 11:30 |
| セッション2 | 12:00 | 15:00 |
売買単位
原則として、本受益権1口を1単位として設定
基準価格
原則、前営業日の最終価格(約定が無い場合の基準価格の決定方法は規定に定める方法による)
値幅制限
設定あり
信用取引/空売り
当面の間は現物取引のみ
精算・決済
売買約定日から2営業日後に実施
売買停止
投資者への情報周知が必要な場合や制度的に取引が行えない場合など、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の判断で実施
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参考文献
三井物産デジタル・アセットマネジメント株式会社 (2025) ALTERNA(オルタナ)
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