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個人向け地方債とは?種類、利率、購入およびメリットをわかりやすく紹介

地方債

地方債とは、簡単に言うと都道府県や市町村が税収不足を借金で補うために発行する債券です。この記事では、地方債のあらましや種類、利率、購入方法をわかりやすく紹介します。

地方債とは

地方債の読み方は「ちほうさい」です。英語では「municipal bond」といいます。

地方債の「地方」とは、都道府県や市町村などの地方公共団体(地方自治体)を指しています。地方債の「債」は、借りるという意味です。つまり、地方債をわかりやすく簡単に言うと、「地方公共団体の借金」ということになります。

地方公共団体が借金をするときには、債券という証券を発行します。昔は債券を紙で発行していましたが、現在はコンピュータ上で電子的に記録されたデジタルデータになっています。

地方公共団体は税収の不足を借金で補うために地方債を発行します。

地方債と国債を合わせて公債といいます。つまり、国や地方公共団体が税収の不足を補うために発行する債券が公債です。

地方債の種類

地方債は誰が買う(どこから借りる)のかによって、次の2種類に分類されます。

地方債の種類
種類 どこから借りる
全国型市場公募地方債 個人・法人
銀行等引受地方債 金融機関

全国型市場公募地方債

全国型市場公募地方債

公募地方債とは、広く投資家に購入を募る方法により発行される地方債です。銀行などの金融機関のほか、個人でも買うことができます。全国型市場公募地方債は、一部の都道府県とすべての政令指定都市が発行しています。

  • 都道府県(青森県、岩手県、山形県、石川県、山口県、香川県、愛媛県、沖縄県を除く)
  • すべての政令指定都市(札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市)

銀行等引受地方債

地方債のうち、特定の市中金融機関など少数の者に直接引き受けてもらうものを「銀行等引受地方債」といいます。

個人が銀行等引受地方債を買うことはできません。

銀行等引受地方債を発行できる団体は、一部の都道府県、すべての政令指定都市、及びです。

利率

地方債の利率は、発行する地方公共団体によって異なりますが、概ね次のようになっています。

地方債の利率
利率(税引前)
5年債 0.010%
10年債 0.029%~0.080%

発行から償還までの期間が5年間の5年債は、どの地方公共団体でも利率は同じです。

発行から償還までの期間が10年間の10年債は、発行する地方公共団体によって利率が異なります。

地方債の利率の決め方は、次の計算式で求めます。

地方債の利率 = 国債の利率 + リスク・プレミアム

地方公共団体が発行する地方債は、国が発行する国債よりも安全性が劣ります。そのため、国債の利率よりも上乗せ分がないと誰も買ってくれません。国債の利率に上乗せする分をリスク・プレミアムといいます。リスク・プレミアムは地方債を発行する地方公共団体によって異なります。財政状態が悪い地方公共団体ほどリスク・プレミアムが大きいので、地方債の利率が高くなります。

10年債の利率ランキングは、次のとおりです。

地方債(10年債)の利率ランキング
地方公共団体 利率(税引前)
大阪府 0.080%
名古屋市 0.060%
埼玉県 0.055%
京都府 0.055%
神奈川県 0.045%
静岡県 0.045%
北海道 0.034%
福岡県 0.029%

出典:一般財団法人地方債協会(2019)

購入

地方債のうち、公募地方債は個人でも購入できます。公募地方債は証券会社や銀行で購入することができます。購入できる証券会社や銀行は、発行される地方債ごとに異なります。

地方債を発行する地方公共団体を営業地域とする地方銀行や、次の証券会社で取り扱うことが多いです。

手数料

地方債の購入に手数料はかかりません。

地方債の販売を仲介する証券会社や銀行は、地方債を発行する地方公共団体から手数料を得ています。そのため、地方債を購入する人からは手数料を取りません。

充当率とは

地方債を発行して集めたお金を、地方自治体の事業予算に充てることができます。ただし、その割合には上限が定められています。これを「充当率」といいます。地方債充当率は、事業内容によって異なります。

令和6年度地方債充当率
項目 充当率
1 一般会計債
 1.1 公共事業等 90%
 1.2 防災・減災・国土強靭化緊急対策事業 100%
 1.3 公営住宅建設事業 100%
 1.4 災害復旧事業 100%
 1.5 教育・福祉施設等整備事業
  1.5.1 学校教育施設等 90%
  1.5.2 社会福祉施設 80%
 1.6 一般単独事業
  1.6.1 一般 75%
  1.6.2 地域活性化 90%
  1.6.3 防災対策 90%
 1.7 辺地及び過疎対策事業 100%
2 公営企業債 100%
3 臨時財政対策債 100%
4 退職手当債 100%
5 国の予算等貸付金債 100%

出典:令和6年度地方債充当率

発行計画

地方債は地方公共団体が事前に策定した発行計画に基づいて発行されます。令和6年度(2024年4月~2025年3月)に発行される地方債のスケジュールは、次のようになっています。

令和6年度地方債発行計画
年月 地方債
2024年4月 埼玉県令和6年度第1回公募公債
埼玉県令和6年度第2回公募公債(5年)
第71回川崎市5年公募公債
2024年5月 埼玉県令和6年度第3回公募公債(5年)
2024年6月 長崎県令和6年度第2回公募公債
2024年4月 第72回川崎市5年公募公債
2024年9月 長崎県令和6年度第3回公募公債
2024年10月 埼玉県令和6年度第4回公募公債(5年)
三重県令和6年度第2 回公募公債(グリーンボンド)
第4回北九州市サステナビリティボンド5年公募公債
第74回川崎市5年公募公債
2024年11月 静岡市令和6年度第1回公募公債
高知県令和6年度第2回公募公債
2024年12月 第2回川崎市グリーンボンド5年公募公債(個人向け)
埼玉県令和6年度第5回公募公債
長野県令和6年度第5回公募公債
新潟市令和6年度第1回公募公債
2025年1月 神戸市令和6年度第2回こうべ SDGs 市民債  (5年)
浜松市令和6年度第1回公募公債
2025年2月 埼玉県市場公募債(10年)
2025年3月 埼玉県市場公募債(10年)

格付

地方債を発行している地方自治体の信用格付は次のとおりです。

地方自治体の格付
地方自治体 R&I Moody’s
宮城県 AA
栃木県 AA+
千葉市 AA
埼玉県 AA+
静岡県 AA+
愛知県 AA+
福井県 AA
奈良県 AA
神戸市 AA+
岡山県 AA+
徳島県 AA
福岡市 A1
佐賀県 AA

※2021年10月11日時点

税金

地方債の利子は「利子所得」として税率20.315%が課税されます。

利子所得の課税
税金 税率 分類
所得税 15% 国税
復興特別所得税 0.315%(所得税額の2.1%) 国税
住民税 5% 地方税

地方債の利子から20.315%が源泉徴収されて、税金を除いた金額が支払われます。既に源泉徴収されているため、原則として確定申告は不要です。申告分離課税として確定申告することもできます。申告分離課税として確定申告すると、株式等の損失と損益通算できます。

地方債を中途売却して譲渡益が発生した場合は、「上場株式等の譲渡所得等」として税率20.315%の申告分離課税となり、確定申告が必要です。株式等の損失と損益通算できます。

マル優

公募地方債はマル優を利用できます。マル優とは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度」の通称で、一定の条件を満たした方が利用できる非課税制度です。次に示す方がマル優を利用できます。

  • 障害者手帳の交付を受けている人
  • 遺族基礎年金を受給している人
  • 寡婦年金を受給している人
  • 障害年金を受給している人
  • 母子年金を受給している人

次に示す金融商品の合計額350万円(預貯金は元本、債券は額面)までの利子が非課税になります。

  • 預貯金
  • 合同運用信託
  • 公社債(国債、公募地方債等)
  • 公社債投信(MRF等)

マル優は特別マル優と併用することができ、合計額700万円までの利子が非課税になります。

特別マル優

公募地方債は特別マル優を利用できます。特別マル優とは「障害者等の少額公募公債の利子の非課税制度」の通称で、一定の条件を満たした方が利用できる非課税制度です。次に示す方が特別マル優を利用できます。

  • 障害者手帳の交付を受けている人
  • 遺族基礎年金を受給している人
  • 寡婦年金を受給している人
  • 障害年金を受給している人
  • 母子年金を受給している人

次に示す金融商品の合計金額350万円(預貯金は元本、債券は額面)までの利子が非課税になります。

  • 国債
  • 公募地方債

特別マル優はマル優と併用することができ、合計額700万円までの利子が非課税になります。

参考文献

総務省 (2022) 地方債の商品性
国税庁 (2022) No.1313 障害者等のマル優(非課税貯蓄)
埼玉県 (2024) 令和6年度市場公募債発行計画

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